低栄養について
低栄養・フレイルにご注意を
高齢者は様々な要因により食事が摂り難くなります。栄養が摂れないと低栄養に陥り、心と体を弱らせる引き金となります。
予防・適切な食事
食べられない要因を確認し、「個々に適した食事」で栄養を摂りましょう。
加齢に伴い心と体の働きが弱くなる状態(虚弱)をフレイルという。
症状
身体的フレイル
・体重減少
・疲れやすい
・身体機能の低下
身体機能の低下の一例ロコモティブシンドローム
骨・関節・筋肉などの衰えにより、「立つ・歩く・座る」などの移動能力が低下した状態
〈ロコモの原因(例)〉
骨・関節・筋肉などの病気
- 骨折、骨粗鬆症
- 変形性関節症
- サルコペニア
サルコペニアとは
(sarco:筋肉/penia:喪失)
加齢に伴い筋肉量が減少し、筋力または身体機能が低下する状態
〈症状(例)〉
- 握力が弱くなる
- 歩くスピードが遅くなる
- 杖や手すりが必要になる
放っておくと要介護のリスクが高まるので予防が大切です。
精神・心理的フレイル
うつ・認識機能の低下など
社会的フレイル
独居・外出頻度の減少など
予防・適切な食事
「今より10分多く体を動かす」など毎日無理なく続けられる方法で!
テレビを見ながらストレッチ
家事をキビキビ行う
軽い体操
低栄養にならないために
口から食べると多くの身体機能を使うので、全身によい影響を与えます。
『食べる』喜びは元気の源、生きる意欲に繋がります。
まずは「なぜ食べられないのか」を確認し、個々に適した食事で栄養を摂ることが大切です。
下記に要因別のポイントをまとめましたので、コラムと併せてご覧ください。
食が細い、食欲が低下した場合
食べ方を工夫したり、少量でも栄養が摂れる食品を利用し、体に必要な栄養を無理なく摂りましょう。
噛む力や飲み込む力が落ちてきた場合
食べ物の形態を調整すれば、誤嚥を防ぎ食事を楽しむことができます。
飲み物を飲む時、誤嚥が心配な場合はとろみをつけるとリスクが減らせますよ。
飲み込みやすくするためには食事の姿勢も大切です。
脱水にも注意
食事量が減ると低栄養と共に脱水も進めやすくなります。対策が必要です。
認知症による場合
食べ物や食べ方がわからなくなった場合は、目の前で料理を食べたり、箸を使う様子などを見せ、認識してもらえる働きかけをするとよいですよ。
偏食がある場合は「食べてもらえること」が一番なので、本人が気に入っている料理を提供しましょう。
具を色々変えて栄養バランスを整えたり、それでも不足してしまう場合は、栄養調整食品で補ってみてはいかがでしょうか。
参考:『絵で見てわかる 認知症「食事の困った!」に答えます』 菊谷武著(女子栄養大学出版部)
高齢者に必要な栄養
元気な体を保つためには『エネルギー』と『たんぱく質』が必要!!
この2つが不足すると低栄養となり、体力や免疫力が低下してしまいます。
高齢者にこれだけ必要とされています
日本人の食事摂取基準(2020年度版)より
※1 推定エネルギー必要量の身体活動レベルI(低い)・II(普通) ※2推奨量
加齢と共に活動量が減るのでエネルギーの必要量も少なくなりますが、たんぱく質は筋力低下や骨折、病気などを防ぐために、若い時(18歳〜)とほぼ同じ量が必要です。
例たんぱく質60gはこれぐらい
※昼食のヨーグルトと夕食の納豆を除くとたんぱく質50gになります。
ミネラル、ビタミンも大切ですが、エネルギーとたんぱく質が不足した体の中ではしっかり働きません。バランスよく栄養を摂ることが重要です!
参考:『低栄養予防のお助けブック』藤谷順子・江頭文江監修(㈱明治 ・女子栄養大学出版部)、
『栄養素キャラクター図鑑』田中明・蒲池桂子監修(日本図書センター)、
『改訂版 図解かみにくい・飲み込みにくい人の食事』藤谷順子・江頭文江監修(主婦と生活社)、
『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』
効率的に栄養を摂ろう
「食が細く、十分な栄養が摂りづらい」方へ
主食・主菜・副菜をバランス良く!栄養を高めるためには「おかず」から食べる
食べやすい主食に偏らず、栄養価の高いおかず(主菜、副菜)も一緒に食べることが大切です。
食が細い場合は、「お腹いっぱい」となる前に、たんぱく質を補える主菜から食べましょう。
食事の回数を増やす
「小食」「食事に時間がかかり疲れてしまう」場合は、1回の食事量を少なくし、数回に分けて食べると、
食事への負担が減らせ、1日の摂取量も増やせますよ。
主食に栄養をプラス
身近な食品をちょっと足すだけで、彩りや香りも良くなり栄養&食欲アップに!
参考:『低栄養予防のお助けブック』 藤谷順子・江頭文江監修(株式会社明治・女子栄養大学出版部)、
『NSTで使える栄贅アセスメント&ケア』 足立香代子・小山広人編(学習研究社)、
『5分でできる介護食』 在宅栄養アドバイザーE-net松月弘恵ほか著(中央法規出版)、
『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』
高齢者の脱水
高齢者は、脱水状態に陥りやすい傾向にあるので、日々の予防と早期発見、適切な水分補給が大切です。
高齢者が脱水に陥りやすい要因
水の出入り
こんなときは要注意!
水分の摂取量が少なく、体内の水分が不足している可能性があります。
水分と共に『電解質(特に塩分)』も多く失われるので、両方補給できるスポーツドリンクなどが必要です。
皮膚や呼吸から無意識に蒸発する水分や暖房による乾燥などで、冬でも脱水に陥る可能性が!こまめな水分補給が大切です。
脱水予防のポイント
※病態により、水分や電解質の制限が必要な場合は、専門の医師・管理栄養士などに相談し、
個々に適した水分補給を行ってください。
参考資料:『カラー固解高齢者の栄養管理ガイドブック』 下田妙子編(文光堂)、
『実践介護食事論一介護福祉施設と在宅介護のための食事ケアー』 杉橋啓子ほか絹蓉(第一出版)、
『スリーステップ栄養アセスメントを用いた在宅高齢者食事ケアガイド -脱水,PEM, 摂食・蒔下障害,褥創への対応』
蓮村幸兌ほか編、在宅チーム医療栄蓑管理研究会監修(第一出版)
ロコモ予防でずっと元気に!
メタボではなく、『ロコモ(ロコモティブシンドローム)』をご存知ですか?
骨や関節、筋肉などの衰えにより、「立つ」「歩く」 「座る」といった機能が低下している状態です。放っておくと日常生活に支障をきたすので注意が必要です!
骨・関節・筋肉などが衰える
立てない、歩けない
日常生活に制限がかかる
要支援・要介護のリスクが高まる
適度な運動と適切な栄養を摂ることで強く丈夫に維持されます。
無理なく続けられる生活習慣を取り入れ、ロコモを予防しましょう。
予防1意識して体を動かす
適度な運動はストレス発散にもなります。
テレビを見ながらストレッチ
家事をキビキビと行う
少しでも歩く。外出を楽しむ。
軽い体操
ポイント
誰かと一緒に楽しみながら行うと、心も元気になり継続できますね!
予防2バランスの良い食事を心がける
色々な食品を食べることが高齢期の筋肉量や体力の低下予防に繋がります。
参考:『ロコモパンフレット2015年度版』 公益社団法人 日本整形外科学会/ロコモ チャレンジ!推進協議会企画・制作
食事と免疫力
免疫力(ウィルスなどから体を守る力)が高いほど感染症に罹り難く健康を保てますが、加齢に伴い低下してきます。免疫力の60~70%は腸でつくられるので、まずは食生活を整え低下を防ぎましょう。
ポイント基本は栄養バランスの良い食事。プラス以下の食品を摂ると◎
腸内環境を良くする「食物繊維、オリゴ糖、発酵食品」
腸は栄養素を吸収する一方で、病原体を排除し感染を防ぐ働きもあります。この働きを活発にするのは善玉菌(腸内細菌)です。善玉菌を増やし腸内環境を整えましょう!
オススメ食品
善玉菌のエサとなり善玉菌を増やす*食物繊維、オリゴ糖*
野菜類・きのこ類・豆類・果物などに多い
オススメ食品
善玉菌(乳酸菌など)を含む*発酵食品*
食事で摂った乳酸菌は腸に定着しないので、毎日食べて補うのがベスト
免疫力の源「たんぱく質」
私たちの体や免疫物質はたんぱく質からつくられているので、不足すると免疫力の低下に繋がります。また、免疫力は体温が36.5°C以上で活発に働き、1°C下がると30%低下するので、熱を生み一定の体温を保ってくれる“筋肉”を落とさないためにもたんぱく質をしっかり摂りましょう。
たんぱく質を適量摂る
筋肉量を維持し体温低下を防ぐ
病原体と戦う力を強める
免疫力を活発にする「ビタミンC(V.C)」
活発にするほか、皮膚や粘膜を丈夫にしてウィルスなどの侵入を防ぐ働きもあります!V.Cは、水洗いや加熱で減るので、そのまま食べられる物がオススメです。
※V.C以外にも免疫力を活発にするビタミンはあります。
一定の物ばかり食べるのではなく、“色々な食品をバランス良く摂る”ことが大切です。
参考:『大丈夫!何とかなります 免疫力は上げられる』奥村康監修(主婦の友社)
『栄養素キャラクター図鑑』田中明・蒲池桂子監修(日本図書センター)
『専門医がやさしく教える注目の栄養素』近藤和雄・渡邉早苗著(PHP研究所)