COPDなどの慢性呼吸器疾患に関する情報 ~苦しくない方法でたくさんごはんを食べるコツ~

COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは?

COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは、気道や肺の細胞などが壊れることによって、肺の機能が悪くなり、スムーズに呼吸ができなくなる病気です。
呼吸に使う筋肉が落ちているため、呼吸時にたくさんのエネルギーを使います。
そのため、健康な人よりも多くの食事量が必要になります。
ところが、食事量の低下や、胃腸の働きの低下により上手く食事がとれず、
やせていく傾向にあります。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは、気道や肺の細胞などが壊れることによって、肺の機能が悪くなり、スムーズに呼吸ができなくなる病気です。

Q なぜ「やせ」てはいけないの?

COPD患者さんは体重が減ると予後が悪い(余命が短くなる)ことが報告されています。
そのため、しっかりと食事をとることが大切です。
COPD患者の標準体重と生存率


COPDでは体力や筋力の低下など悪循環を生み出します

COPDでは、このような
「食欲が減る→やせる→筋力が低下する→息がきれる→動かなくなる→食欲が減る」
という悪循環に陥らないようにし、しっかりと食事をすることが大切です。


悪循環に陥らないためにはしっかりと食事をすることが大切



自分の体格と必要な栄養量を知ろう!

  • 自分の体格を知りましょう

    こまめに体重を計り、注意するようにしましょう。

  • 1日に必要な栄養量を知りましょう

    呼吸筋に負荷がかかっているため、たとえ安静にしていても
    1日当たりの呼吸だけに要するエネルギーは健康な人に比べて数倍以上となり、
    重症化すると10倍にもなるといわれています。(※咳1回で2kcalのエネルギーを消費します。)
    また、筋タンパクの保持には十分なたんぱく質をとる必要があります。


らくらく自動計算

身長と体重を入力することで、標準体重、1日に必要なエネルギー量、1日に必要なたんぱく質量の算出が自動的に計算できます。

身長と体重を入力※半角数字で入力してください。

身長cm体重kg

標準体重の算出は…


標準体重の算出方法

  • 標準体重(IBW)

    身長m×身長m× 22 = kg

  • 標準体重比

    体重kg÷標準体重kg× 100 =

標準体重比の評価

(例)170cm、55kgの方の場合

標準体重→ 1.7m×1.7m×22=63.6kg

標準体重比→ 55kg÷63.6kg×100=86.5
(軽い栄養不良)


  • やせ

    呼吸筋もやせて呼吸がしにくくなり、息切れが改善しにくくなります。入院した場合には入院期間が長くなります。

  • 肥満

    内臓脂肪の蓄積は横隔膜の運動を低下させるため、呼吸がしづらくなり、息苦しくなります。また、高血圧や糖尿病などを併発する恐れもあります。


1日に必要なエネルギー量の算出方法

標準体重kg× 35kcal/kg =kcal

※標準体重にかけるカロリーは症状によって幅があります。指導内容によって30~40kcal/kgの間で調整してください。


1日に必要なたんぱく質量の算出方法

標準体重kg× 1.5g/kg =g


体格と栄養量は下記表を目安にすることもできます

体格
身長(cm)140145150155160165170175180
やせすぎ(kg以下)39.142.044.948.051.154.457.761.264.7
標準(kg)43.146.349.552.956.359.963.667.471.3
太りすぎ(kg以上)48.952.556.159.963.867.972.176.480.8
栄養量
身長(cm)140145150155160165170175180
1日に必要な
エネルギー量(kcal)
1,5001,6001,7001,8502,0002,1002,2002,3502,500
1日に必要な
たんぱく質量(g)
65707580859095100105

※上の表でやせすぎに該当した場合は下の表で示されたエネルギー量、たんぱく質量よりも多く栄養をとるようにしましょう。
詳しくはかかりつけの医師または栄養士へご相談ください。




健康管理は、永続的な計測と記録が大事!「自己管理シート」を使って始めてみましょう

食事の基本と上手に食べるコツ


ポイント1
エネルギーをしっかりとる!

エネルギーが足りないと体の筋肉を使ってエネルギーを作り出すため、不足するとますます痩せてしまいます。しっかりエネルギーをとることが大切です。

しっかり食べて元気!

ポイント2
脂質をしっかりとる!

油はエネルギー量が高く、体内に二酸化炭素をためにくい食品です。炒め物や揚げ物だけでなく、油で炒めてから煮るなど、油を上手に利用しましょう。

※乳製品や肉などの動物性油脂は血中コレステロールを上昇させると言われていますが、同じ動物性の魚油、サラダ油やオリーブ油、胡麻油などの植物性油脂は上昇させにくいと言われています。お体の状態や料理に合わせた油を使用して効率よくエネルギーアップを図りましょう。

脂質をしっかりとってエネルギーアップ

ポイント3
たんぱく質をしっかりとる!

たんぱく質は筋肉をつくるのに欠かせません。良質なたんぱく質が含まれている魚、肉、卵、大豆製品、乳製品などを積極的にとるようにしましょう。

魚、肉、卵、大豆製品、乳製品などを積極的にとりましょう

ポイント4
数回に分けたり、間食を上手にとる!

3食しっかりと食べることが理想ですが、どうしても食欲がない場合は3食にこだわらず、数回に分けて食べるようにしましょう。また、3食で十分な栄養を摂取できない場合は、間食をとるなどの工夫をしましょう。


食事例

  • 和食の食事例
  • 洋食の食事例



こういう時はどうしたらよいの?

こういう時はどうしたらよいの?

食欲がありません

  • 肉や魚などカロリーの高いものから食べる。
  • できるだけ好きなものから食べる。
  • 白身魚やめん料理、冷たいサラダなどのさっぱりとした料理を取り入れる。
  • 食事を何度かに分け、回数を増やす。
  • おやつや治療用特殊食品を使用する。

おやつや治療用特殊食品を使用しましょう

  • ※参考文献:五訂日本食品成分表
  • ※上記はあくまでもカロリーの目安です。大きさによって変わります。

食欲がありません

普段の食事が食べられない場合は、少量でエネルギーや栄養素を補給できる食品を使用するのも効果的です。適切な栄養補給をすることで、栄養状態の改善が期待できます。

※日清MCTパウダー・オイルは中鎖脂肪酸のみでできており、中鎖脂肪酸は一般的な油に比べて消化吸収に優れ、速やかにエネルギーとなります。

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息切れしてしまって食べられません

  • 少ない量でカロリーの高いものを食べる。
  • テーブルとイスの高さを調節して、疲れにくく食べやすい高さを探す。
  • 食事中の酸素飽和度を計り、かかりつけのお医者さんに相談しましょう。

すぐに満腹になってしまいます

  • 肉や魚などカロリーの高いものから食べる。
  • 食べものを優先して、飲み物は最後にする。

食事をしていると疲れてしまいます

  • 食事の前に十分な休息をとる。
  • テーブルとイスの高さを調節して、疲れにくく食べやすい高さを探す。
  • 食事の回数を増やして無理なく食べるようにする。
  • 疲れを感じたら少し休憩をとるなどしてゆっくりと食べることを心がけましょう。

お腹がはります

  • 食事の前に十分な休息をとる。
  • 食事を分けて、一度に食べる量を少なくする。
  • 空気を飲み込まないように、よくかんでゆっくり食べる。
  • ガスを出すような食物、炭酸飲料は避ける。

ガスを出すような食物、炭酸飲料は避けましょう


便秘になってしまいます

  • からだを定期的にうごかす。
  • 冷たい飲料や食物繊維をとる。
  • かかりつけのお医者さんに相談しましょう。

食事以外に何か工夫できることはありますか?

  • 運動をする

    筋肉をおとさない、そしてお腹を空かせるためには運動が効果的です。呼吸が苦しくない程度に、体を伸ばすストレッチやウォーキングをしましょう。また、呼吸機能の維持のために腹式呼吸を行うことも効果的です。

    腹式呼吸(横隔膜呼吸)の練習方法
    • 1 身体の力を抜きリラックスします。首を回したり、肩や腕を振ったりして筋肉をほぐします。
    • 2 利き手をおへその上に、もう一方の手を胸の上におきます。
    • 3 鼻から空気を吸います。
    • 4 ゆっくりと口をすぼめて空気を吐きます。
    • ※呼吸とともにお腹の上においた手が、息を吸ったときに上がり、息を吐いたときに下がることが大切です。
    • ※立位が難しい場合は寝た位置からはじめ、この呼吸法が無意識にできるようにしましょう。
    腹式呼吸(横隔膜呼吸)の練習方法

    からだを定期的にうごかしましょう

  • 1日の生活リズムをつくる

    決まった時間に食事をするなど生活にメリハリをつけ、趣味に時間を使ったり、外出するなどたまには気分転換することを心がけましょう。

  • 家事を工夫する

    洗濯物は低い位置に干す、重い掃除機ではなくホウキを使う、小さいサイズの調味料を使用する、電子レンジを活用して調理をする・・など、普段行っている家事の手順を見直し、なるべく負担のかからないようにしましょう。


肺だけ気にしていれば大丈夫ですか?

  • 冬場は感染症予防が重要です。肺炎球菌やインフルエンザワクチンなどの予防接種をしっかり受けましょう。
  • 吸入薬が処方されている場合は、きちんと吸えているか薬剤師に相談しましょう。忘れないように自分のリズムで指示を守って使用することが大切です。

  • 蝶名林 直彦 先生

    蝶名林 直彦 先生
    聖路加国際病院 内科統括部長
    呼吸器センター長

  • 藤谷  順子 先生

    藤谷 順子 先生
    国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院
    リハビリテーション科医長


このコラムの内容はCOPDの概要です。不安やお困りの点はかかりつけのお医者さんへ相談ください




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